KPMG Logo

TAXコンサルティング講座 ー M&Aコンサルティング

Q なぜM&Aにおいて税務の視点が重要なのですか。

経済・産業のグローバル化及びIT技術等の進歩に伴い、企業を取り巻く環境の変化は加速する一方です。IoT、ビックデータ及びAIと言うものに表される第4次産業革命が起こっている昨今、そのスピードはすさまじく、経営判断には瞬時の遅れも許されません。一方で国内市場は人口減少を起因として縮小傾向であり、日本企業は更なる成長を求めるためには海外市場に活路を見出さざるを得なくなっています。こうした背景のもと、企業成長のための“時間を買う”という目的でM&A(Merger and Acquisition=企業の合併と買収)が有効な戦略となっています。自ら成長のタネをまいて育てるのではなく、既に実をつけた成木を買ってくることで、生育の時間を省略するという狙いです。
そのときに注意しなければならないのが、税金です。企業や事業を買収・統合する際、想定外の税金を払わなくてはならないケースがあるからです。
そうしたリスクを抑える、わかりやすく言えば、“税コストを適正化する”ために論点を把握し、解決策を提供することが、タックスコンサルティングの使命です。

クロスボーダーM&Aの主なパターン

インバウンドM&A

海外企業・ファンド等が
日本国内で行う
買収・売却

売買対象事業:日本国内

日本企業の買収・売却

アウトバウンドM&A

日本企業・ファンド等が
海外で行う
買収・売却

売買対象事業:海外

海外企業の買収・売却

特にクロスボーダー(国際取引)の場合、他国の税制や国と国の取り決めが、投資回収に係るキャッシュフローに大きく影響してきます。あるいは、ターゲット(売り手)が税務面での問題を抱えていることが外からは見えない場合、M&A成立後に想定外の課税リスクに直面することもあります。こうした課題を“みえる化”することで、クライアントである「買い手」のリスクを軽減し、M&A成功へと道筋を示します。

Q 具体的にどのようなコンサルティングを行うのですか。

重要な業務の1つが、買収・投資ストラクチャーを構築することです。
買収・投資ストラクチャーとは、他企業の買収を行う際の手法のことで、広義には買収前後で行われる組織再編取引も含みます。
一般的にM&Aの手法は、株式取得と事業(事業・負債)取得に分けられ、その具体的な手順となると様々です。
法人格を買収(株式取得)することに法的その他のリスクが伴う場合は、会社を買収するのではなく事業そのものを直接取得(事業取得)する方が有効なケースがあります。また、買収後に組織再編をすることで税コストを適正化できるケースもあります。
個々のM&A案件について、クライアントのM&Aの目的やゴールを理解し、課税上のメリット・デメリットとリスクを分析し、「クライアントにとって最適なM&Aが可能となるように組み立てる」という発想でベストな手順・手法を組み立てていくのがタックスストラクチャリングです。
ポイントは可能性のある手法のすべてについて、メリット・デメリットとリスクをすべて“見える化”し、クライアントへのアドバイスを行うことです。M&Aにおいては「ストラクチャーの検討はタックスから始まる」と言われるほど、タックスコンサルティングが重要な役割を担っています。

企業買収には複数のパターンがある

KPMG税理士法人
KPMG税理士法人

Q 買収金額はどのように決めるのですか。

「売り手」に対して、「買い手」が「買収したい」という意向を表明する文書のことを意向表明書と呼びます。この意向表明書は、法的拘束力のないものと、法的拘束力のあるものがあります。一般的に、法的拘束力のある意向表明書を提出する前にデューデリジェンスが行われることになります。

 

デューデリジェンスとは「Due(義務)Diligence(努力)」のことで、具体的には企業の価値やリスクを測ること、いわば企業の健康診断のようなものです。
企業買収の際には、買うもの(株式価値や事業価値)を評価することが必要となりますが、価値評価を行う前提として、以下のようなデューデリジェンスが行われます(他にもデューデリジェンスが行われる分野がありますが、省略します)。

  • 申告納税が適正に行われているかを調査する「税務デューデリジェンス」
  • 財務的視点で調査する「財務デューデリジェンス」
  • 買収後のシナジーや事業計画の合理性等を調査する「ビジネスデューデリジェンス」
  • 法的な問題がないかを調査する「法務デューデリジェンス」
  • 人事制度等を調査する「人事デューデリジェンス」
  • ITシステムの内容等を調査する「ITデューデリジェンス」

各デューデリジェンスはビジネスコンサルタントや弁護士などそれぞれの分野のプロフェッショナルが担当しますが、税務デューデリジェンスを担うのは言うまでもなくTAXコンサルタントです。

税務デューデリジェンスでは被買収企業(ターゲット)が法人税や事業税などを適正に申告し、納税しているか、後々の税務調査で新たな追徴課税が発生しないかなどを調査します。適正な調査を行わずに、M&Aが終わった後、税務調査で追徴課税が発生した場合、買収金額の妥当性に疑義が生じるほか、会社役員の善管注意義務違反が問われるケースもあり得ると考えられます。
タックスコンサルティングでは、こうしたリスクの有無を徹底的に調査した上で、最終的に「調査報告書」としてクライアントに提出することになります。

Q M&Aコンサルティングに携わるやりがいは何でしょうか。

企業の経営環境が激変したことで、今やM&Aは企業成長のための重要な戦略となっています。タックスコンサルタントとしてM&A成功に向けたアドバイスを行うことは、クライアントの成長に貢献できるというモチベーションが得られます。
特に企業の成長に貢献することは社会の経済的発展に携われるという喜びにつながるでしょう。

Summary

  • 企業の成長のために“時間を買う”という発想で、M&Aが重要度を増しています。
  • M&Aに伴う課税リスクを抑え、税務コストを適正化することがタックスコンサルティングの使命です。
  • M&Aの手法・手順を決めるストラクチャーの検討は「タックスコンサルティングから始まる」とも言われています。
  • 買収前に課税リスクを把握するために税務デューデリジェンスを行います。