TAX基礎講座:
6. グローバルモビリティサービス(GMS)

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Q. グローバルモビリティサービス(GMS)とはどのようなサービスですか?

企業のグローバル化に伴い、日系・外資系に関わらずグローバルビジネスを展開している企業では、日本から海外拠点への異動、あるいは海外本社から日本法人への異動など、人材がクロスボーダーに行き来する状況が日常的に起きています。それに応じて、企業には新たに検討しなければならない課題が生じています。

企業が直面する海外出向・出張に係る検討課題
  • 海外勤務規定
  • 報酬制度
  • ビザ
  • 税金(個人所得税)
  • 社会保険
  • 税金(法人税) ※海外進出支援も参照
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従業員が税や社会保障などの制度が異なる他国へ赴任している期間も、自国で勤務する際と同等の処遇を保障すべく、海外赴任者には公正かつ適正な手当てが求められます。企業はそのための社内制度等を新たに構築し、適切に運営していかなければなりません。

日本企業の場合、以前は日本から海外へ出向または出張することがほとんどであり、その出向・出張先国も限られていたため、企業の人事部門がこのような制度設計・運営を担当していました。しかし近年においては、海外から日本への外国人赴任者や、海外から海外への国外間異動等が増加しており、加えて、異動先の国や地域が多様化してきたこと、税務・社会保険・就労ビザなど幅広い分野で専門性が求められること等から、信頼のおけるビジネスパートナーにサポートを依頼するケースが増加しています。
こうしたニーズに応えるのが、グローバルモビリティサービス(GMS)です。

GMSのサービスは、大きく次の2点に分けられます。

① 個人所得税の確定申告業務のサポート

② 人事向けコンサルティングサービス

以下、それぞれについて詳しくご説明します。


Q. 「① 個人所得税の確定申告業務のサポート」とは?

最もニーズの高いサービスが、海外赴任者の確定申告書の作成および税務アドバイスです。これは私たちが、クライアント企業の海外赴任者の確定申告業務を代行するサービスで、東京事務所においては、日本に派遣されてきた外国人赴任者の確定申告業務を代行するケースが代表的です。

また、このような外国人赴任者に対して、日本の税制や社会保険制度について、および、それらが赴任者の母国と異なることで発生する手当や調整項目などについて説明する「タックスカウンセリング」も、GMSのコアサービスの一つです。特に新人コンサルタントはまずこの「タックスカウンセリング」から業務をスタートし、徐々に多様な知見を身につけていくことになります。

GMSのコアサービスのひとつである、米国籍または米国永住権保持者の赴任者への米国確定申告書の作成業務も、新人コンサルタントが入社1年目から担当する仕事です。米国籍または米国永住権保持者は居住国に関係なく、米国での確定申告が毎年必要となるため、米国以外の主要国の各KPMG事務所でも米国の確定申告書作成サービスを提供しており、日本もそのひとつです。
連邦国である米国では、各州が独自の税法を持っているため、連邦税(国税)のみではなく各州の税法に関する知識も求められます。米国以外の国で米国の連邦税と州税を習得し、税制改正等にも対応することは簡単なことではありません。そのため、大手会計事務所では日本事務所と米国事務所とがそれぞれ分業をして自国の確定申告業務を行うことも珍しくありません。
しかし、研修や事例照会等の制度を充実させ、日米両国の確定申告業務を日本で担当できる環境を構築しています。これは、以下の点からキャリアやスキルアップに非常に有用と言えます。こういった面もGMSに携わる大きな魅力といえるでしょう。

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米国確定申告業務は全世界で求められるグローバルスキルである点。

上記の通り米国人の確定申告業務は世界中で必要とされています。スキルを身に着けることで世界市場において非常に市場価値の高い人材となることが出来ます。

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他国の税制を深く理解することが、人事向けコンサルティングを行う際の武器となる点。

コンサルティング業務は幅広いスキルと知識が必要です。日米両国を担当することでそれらの獲得が可能になり、コンサルティング業務へスムーズに入ることが出来ます。


Q. 「人事向けコンサルティングサービス」とは?

もう一つの重要なサービスが、人事向けコンサルティングサービスの提供です。クロスボーダーでの人材の異動に際して必要となる各種制度の設計や制度運用に関するコンサルティングを行います。
これらの業務は非常に多岐にわたっているので、その一部をご紹介します。

これから海外進出を本格化させようというクライアントに対しては、例えば海外勤務規定の構築や、海外勤務の処遇決定に関するアドバイスを行います。前述のとおり、海外赴任期間中も赴任者が自国で勤務する際と同等の処遇を保障されること、海外勤務によって他の従業員との不公平感が生じないよう配慮すること等が非常に重要となります。また、海外との物価や治安等の違いを調整するための手当をどのように設定するか、赴任先国の税制を考慮した上で実務上どのような対応が求められるか等、国や地域に応じて様々な対応策を検討します。
グローバル化が進んでいるクライアント企業には、グローバル人事業務のヘルスチェックを行い、各赴任元国および赴任先国における給与計算や所得税申告が正しく行われているか、効率的な業務フローであるか等を、クライアントからのヒアリングや提出資料を通じて精査し、改善点等の提案を報告書にまとめるサービスも行っています。

また、税務のみならず、社会保障制度に関するアドバイスも日常的に行われています。海外で働く場合、原則としてその国の社会保障制度に加入することが求められます。一方で、日本からの赴任者は海外赴任によって将来受取るであろう年金の給付額に影響が出ないように、海外赴任中も日本の社会保険に加入し続けることが一般的です。

こういった背景から日本と赴任先国で社会保険を二重に負担せざるを得ないケースもありますが、近年では、こうした二重負担を防ぐため “社会保障協定”を結んでいる国もあり、そういった各国の状況に照らし合わせて社会保険料のコスト負担額を試算するサービスも行います。

さらに海外での就労に不可欠な就労ビザの取得サポートや、適正な取得ビザの種類についてアドバイスを行う場合もあります。就労ビザの発給は二国間の関係や政治状況等に大きく影響されることがあるため、前年はスムーズに発行されたビザが、今年は発行に手間取るというケースは珍しくありません。
ビザと税務・社会保障が密接に繋がっている国については、赴任者が保有するビザの種類により赴任先国における税務や社会保障の取扱いが異なることで、取得するビザを慎重に検討することが求められることもあります。
また、帰任時に正しくビザを返納せずに出国してしまうと、想定以上の所得税が課せられてしまう国もあるなど、各国のビザと税務・社会保障の関係性等も把握したうえでビザ申請が支障なく進むようアドバイスすることもGMSの役割といえます。

このように、コンサルティングサービスの幅の広さこそ、GMSならではの魅力といえます。


Q. GMSに携わるやりがいとは何でしょうか? また、どんなスキルや資質が求められますか?

クロスボーダーでの人材の異動は今後ますます増加し、人事向けコンサルティングニーズは高まると考えられます。それに対して十分なクオリティのサービスを提供できるファームや人材の絶対数は少なく、コンサルタントとしてのスキルは高い市場価値を発揮できるでしょう。
こうしたコンサルタントに求められるスキルとしては、クライアントの問題や課題を理解し、適切にソリューションを提案できるような高いコミュニケーション能力および英語力は必須と言えます。税務などに関する専門知識は入社後に習得できるように充実した社内研修制度が準備されています。応募者の皆さんに求めるのは、コンサルタントとして成長するための貪欲な知識欲、好奇心といった資質が挙げられます。

Summary

  • GMSのサービスは大きく分けて、①従業員個人の確定申告サービス ②人事向けコンサルティングサービス、の2点です。
  • ①従業員個人の確定申告においては、特に日米両国の所得税申告業務を担当することによって、グローバルに通用するスキルを磨くことができます。
  • ②人事向けコンサルティングサービスにおいては、税務のみならず、社会保障や就労ビザなど幅広い領域のコンサルティングスキルを磨くことができます。
  • GMSに対するニーズが高まる一方なのに対し、対応できるコンサルタントが限られているため、これからスキルを磨くことで非常に市場価値の高い人材になることが可能です。