TAX基礎講座:
4. 組織再編コンサルティング

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Q. 企業の組織再編は何のために行われるのですか?

組織再編とは、文字通り企業の組織を統合や分割などで再編成することで、会社法上の法律行為です。
組織再編の目的は、M&Aの場合と同様、企業を取り巻く環境の変化に迅速に対応するために行われます。2001年に、一定の要件のもとで組織再編が行われた場合は課税を繰延べできる「企業組織再編税制」が創設されたことをきっかけに、機動的な経営戦略の一環として組織再編の重要性が高まりました。

A社からB社に債権や債務の移転を行うと税務上の取扱いが変わることがありますが、組織再編という形にすることで企業組織再編税制が適用されて課税されずに済むこともあります。そうしたメリット・デメリットを考慮しつつ、税コストをミニマイズするための提案を行うことがTAXコンサルティングです。
組織再編と聞くとリストラクチャリングを連想する方もいらっしゃるかもしれませんが、企業がより強くなって生き延びていくための進化の過程というのがその本質です。そうした貢献はTAXコンサルティングならではの醍醐味の一つです。

組織再編税制とは

企業が合併や分割などで組織を再編成するとき、資産・負債も一緒に移転します。それによって損益が発生することで税金が課せられるのですが、一定の条件を満たせばその課税が繰延べられます。これが組織再編税制です。


Q. 組織再編にはどのようなケースがありますか?

よくあるケースが、独自の優れた技術によって本業そのものは順調であるものの、副業の不動産投資の失敗などで経営が傾いているようなケースです。この場合は本業以外の事業の売却や複数あるグループ会社を統合して合理化を図るなどの組織再編を行い、収益力の確保を行ったうえで新たなスポンサーの力を借りる、あるいは金融機関からの支援を受けるといった手段で自主再生を目指す事があります。当然のことながらその際は新しい事業計画を立案し、資金援助を受けるための説得材料とすることが必要となりますが、そのためには組織再編を行う過程での課税を抑え、組織再編後の税コストを最適化することが重要です。

キャッシュフローを確保することでスポンサーや銀行からの信頼を下げさせることなく、新たな成長資金を調達し、再生への道筋をつけていきます。企業活動がグローバル化したことで、国境をまたいだグローバル企業が行う組織再編も増えました。国が変われば税制や法律も変わります。世界には、日本とは大きく異なる税制を有する国もあります。ですからクロスボーダー組織再編案件では、他国における課税関係も十分に把握した上での高度なTAXコンサルティングが求められます。

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Q.今後、組織再編は増えていくのでしょうか?

企業環境の変化のスピードはさらに加速し、企業戦略としての組織再編は一層重要なものとなっていくことでしょう。生き残りを目指すための組織再編は増えていくと思われ、国もそうした動きを後押しすると考えられます。2017年度の税制改正で「スピンオフ税制」が創設されたのも、その流れの一環ととらえていいでしよう。
スピンオフとは「副産物」などを意味する言葉で、経済用語としては「独立組織をつくること」「会社を分離新設すること」といった意味になります。

従来の税制では適格組織再編取引に該当せず課税されていたスピンオフが、一定の要件のもと適格組織再編取引として課税の繰延べ措置を受けられることとなったため、特定の事業や子会社をグループ外に切り出すことが円滑に行えるようになりました。そのため企業の組織再編、事業再編がさらに促される可能性があります。
適者生存の原則に沿って企業が生き残りを続けていくためには環境の変化に柔軟・迅速に対応して自らも変化していくことが必要であり、「スピンオフ税制」はそうした変化を国が企業側に対して求めていることを示していると言えるでしょう。


Q. これからのTAXコンサルタントにはどんな能力が求められるのでしょうか?

企業が生き残っていくためにはユニークで付加価値の高いサービス・商品の提供が不可欠ですが、これはTAXコンサルタントにとっても同様です。クライアントから提供された情報を整理し申告書に落とすだけの作業は、近い将来AIにとって代わられることでしょう。今後、TAXコンサルタントには、クライアントの課題を解決するためのソリューションを発想し、提案する力が、より求められるようになります。
単に知識を売る時代は終わり、これからは価値を創造する時代となったということを、KPMG税理士法人での活躍を目指す皆さんには認識していただきたいと思います。

Summary

  • 企業の経営戦略としての組織再編を後押しする仕組みが企業組織再編税制です。
  • 経営破綻の危機から企業を救うためにも組織再編は有効な手段です。
  • 企業のさらなる進化を後押しするために「スピンオフ税制」が創設されました。